AAV(EGPA、GPA、MPA)

EMEA分類アルゴリズム(Wattsのアルゴリズム)

ANCA関連血管炎(AAV)資料

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原発性全身性血管炎のエントリー基準

● 血管炎類似病態鑑別のため、少なくとも3か月以上観察

● 診断時16歳以上

● 臨床症状は診断時だけでなく、診断までの経過中に一度でも出現があればよい

● 次のA)B)C)を全て満たす場合には、EMEA分類アルゴリズム(Wattsのアルゴリズム)で血管炎の分類を行う

A) 症状や所見がAAVまたはPANに特徴的である(血管炎の組織学的証明がない場合)、あるいは矛盾しない(組織学的証明がある場合)

原文では、症状や所見を明記していませんが、後述の表「参考となる原発性全身性血管炎の症状・所見」を参考にして下さい。

B) 以下の項目のうち、少なくとも1つを満たす

1. 組織学的に証明された血管炎または肉芽腫形成 (壊死性糸球体腎炎を含む)
2. PR3-ANCAまたはMPO-ANCA陽性 (ELISA法がなければ間接免疫蛍光法でもよい)
3. 血管炎および肉芽腫症が示唆される以下のいずれかの所見がある
 ① 神経生理学的検査による多発性単神経炎
 ② 血管造影あるいはMRI血管画像によるPAN所見
 ③ 胸・頸部MRI / CTによる眼窩後部や気管病変
 ④ 腎・皮膚生検組織にはIgAの沈着がなく、抗GBM抗体は陰性(※)
 ⑤ 好酸球増多(>10% または 1.5×109 / L)

C) 症状/所見を説明できる他疾患がないこと、特に下記疾患を除外できること

① 悪性腫瘍
② 感染症(B型・C型肝炎、HIV、結核、亜急性心内膜炎)
③ 薬剤性(ヒドララジン、プロピルチオウラシル、アロプリノール等)
④ 二次性血管炎(RA、SLE、シェーグレン、結合組織病)
⑤ ベーチェット病、高安病、巨細胞性動脈炎、川崎病、クリオグリブリン血症、IgA血管炎、抗GBM抗体病
⑥ 血管炎類似病態(コレステロール塞栓、カルシフィラキシス、劇症型抗リン脂質抗体症候群、心房粘液腫)
⑦ サルコイドーシスと他の非血管炎性肉芽腫性疾患


※ IgA沈着はIgA血管炎(Henoch-Shönlein)を、抗GBM抗体陽性はGoodpasture症候群を疑う所見であるが、AAVでも陽性となることがある

参考となる原発性全身性血管炎の症状・所見

臓器 症状・所見
全身症状 発熱(38℃以上)、体重減少、倦怠感、筋痛、関節痛・関節炎
皮膚 梗塞、紫斑、潰瘍、壊疽、網状皮斑、結節、その他の皮膚血管炎
粘膜・眼 口腔潰瘍/肉芽腫、陰部潰瘍、唾液腺/涙腺炎、眼球突出、強膜炎、結膜/眼瞼/角膜炎、眼痛、複視、霧視、視力低下・失明、ブドウ膜炎、網膜変化(血管炎/血栓症・虚血/滲出物/出血)、
耳・鼻・咽頭 難聴、耳痛、耳漏、中耳炎、乳突蜂巣炎、外耳道炎、耳介軟骨炎、内耳炎、顔面神経麻痺、膿性鼻漏、鼻出血/痂皮形成、鞍鼻、鼻中隔穿孔、鼻腔内潰瘍/肉芽腫、副鼻腔病変、嗄声、咽頭痛、咽頭潰瘍
胸部 喘鳴、気管支喘息、声門下・気管狭窄、気管内の偽腫瘍/潰瘍、肺野結節・空洞、胸水/胸膜炎、浸潤影、喀血/血痰、肺胞出血、肺梗塞、(肺線維症?)
心血管 不整脈、弁膜症、心膜炎、狭心症・心筋梗塞、心筋症、心不全、深部静脈血栓症、末梢の脈拍欠損、
腹部 腹膜炎、消化管出血・潰瘍・穿孔、虚血性腸炎、門脈血栓症、肝機能障害、胆嚢炎、膵炎、副腎梗塞・出血
腎臓 糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎、肉眼的・顕微鏡的血尿、蛋白尿
尿路・生殖器 尿管狭窄、前立腺炎、精巣炎、卵巣炎、卵管炎
末梢神経 四肢のしびれ・じんじんした痛み、麻痺・筋力低下、多発単神経炎、単神経炎
中枢神経 頭痛、意識障害、けいれん、脳梗塞・出血、肥厚性硬膜炎、脳神経炎、静脈洞炎・血栓症

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太字:比較的頻度が多いもの

GPAのACR分類基準

基準項目 定義
1. 鼻あるいは口腔内炎症 有痛性あるいは無痛性の口腔内潰瘍、または、化膿性あるいは血清鼻汁の出現
2. 胸部レントゲンにおける異常陰影 結節、固定性浸潤、あるいは空洞の存在
3. 尿沈渣 顕微鏡的血尿(>赤血球5個/高倍率1視野)あるいは赤血球円柱を認める
4. 生検における肉芽腫の証明 動脈壁内、血管周囲または血管外領域(動脈、小動脈)の肉芽腫

上記4項目中少なくとも2項目を満たす

Leavitt, et al. Arthritis Rheum 1990; 33: 1101-1107

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血管炎の代用マーカー

血管炎 代用マーカー
GPA 1. 胸部画像にて1か月を超えて存在する固定性肺浸潤、結節あるいは空洞(感染症や腫瘍を除外する)
2. 気管支狭窄
3. 1か月を超える血性鼻汁と痂皮形成、あるいは鼻の潰瘍
4. 3か月を超える慢性副鼻腔炎、中耳炎あるいは乳様突起炎
5. 眼窩後部の腫瘤あるいは炎症(偽腫瘍)
6. 声門下狭窄
7. 鞍鼻または破壊性副鼻腔疾患
腎血管炎 1. 10%を超える変形赤血球または赤血球円柱を伴う血尿
2. 検尿で 2+ 以上の血尿と蛋白尿

代用マーカーのうち一つでもあればよい

Watts, et al. Ann Rheum Dis 2007; 66: 222-227

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